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2026/06/19 16:54
こんにちは!
日本最古のデニムブランド「STAR OVERALL」の広報担当Mです。
前回は、STAR OVERALLの原点についてお話ししました。
妻ゑきがアメリカで出会った炭鉱夫の作業着——それがオーバーオールの出発点です。
働く現場の機能から生まれたその一着を、山本被服は忠実に復刻することにこだわりました。
前回お話はこちら
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【STAR OVERALLのこだわり】1/5:なぜ「オーバーオール」から始まったのか
今回は、復刻の裏側についてのお話をしたいと思います。
100年前のオーバーオールを「そのまま作る」
そう聞くとシンプルそうですが、開発担当の富所さんが最初にぶつかったのは、技術的な問題ではありませんでした。
もっと根本的な人の意識の問題でした。

「そっくりに作る」が、一番難しい
復刻品の世界には、大きく分けて二つのアプローチがあります。
ひとつは「当時のデザインを現代風に解釈し直す」もの。
シルエットを今の体型に合わせ、素材も今の技術で作りやすいものに替え、着心地を現代の基準に引き上げる。言ってしまえば「インスパイア」です。
作り手にとっては自由度が高く、一定のクオリティに着地させやすい。
もうひとつは「当時の仕様を忠実に再現する」もの。
これは自由度が低い分、すべての判断が「当時はどうだったか」に縛られます。
資料が足りなければ足りないなりに、手を動かしながら問いを立て続けなければなりません。
STAR OVERALLが選んだのは、後者です。
今の人が着られるよう最小限の調整は加えていますが、軸はあくまで「当時はどうだったか」
素材も、仕上げも、ディテールも、現代の作りやすさや着やすさに寄せず、当時の再現を優先しました。
出発点になったのは、かつて酪農向けに配られていたチラシです。
山本被服が当時どんなオーバーオールを売り出していたか。
その雰囲気が、紙の上には残っていました。
現会長から聞いた話と、社内に残された資料。それを手がかりに、富所さんは試作を重ねていきます。
戦災で機械も当時の製品もほぼ焼失し、残ったのは手回しミシン1台だったと伝わっています。
作り手が参照できる「現物」は、ほとんどない状態からのスタートでした。
それでも「ディテールは忠実に」というのが、この復刻の前提でした。
きれいに縫わない、という難しさ
「最大の苦労は何でしたか」と富所さんに聞くと、返ってきた答えは少し意外なものでした。
「縫製スタッフの意識を変えることです。針目が少し飛んでも、それがデニムの味なのに、職人がきれいに縫い上げてしまうんです」
これは、100年以上もの間、自社工場であらゆるユニフォーム・作業着を手がけてきた山本被服だからこその悩みです。
現在は腕のいい職人たちが精巧なユニフォームを縫っている現場です。
それゆえ「美しく整った縫い目」を仕上げてしまう。
そこに問題がありました。
ユニフォームメーカーとして長年培ってきたのは、均一で、丁寧で、品質の安定した縫製です。 それは誇るべき技術です。
でも100年前の作業着の復刻においては、そのまま活かせない場面があります。
当時の縫製には、工業ミシンの目盛り通りではない、人の手と機械がぶつかり合うような、ある種の無骨さがあります。
それを「わざと残す」のは、きれいに縫うより、むしろ難しい。
ただ、その無骨さこが「再現すべき当時のディティールだ」と、こだわりを曲げませんでした。
「縫製スタッフと何度も話し合いました」と富所さんは言います。
これがいい縫い目だ、という基準を共有し直すところから始めなければならなかった。そしてその基準とは、数字でも規格でもなく「デニムらしさ」という感覚的なものでした。

当時の仕様が、あなただけの一着を育てる余白を生んだ
復刻の仕様を見ていくと、当時の製造法がそのまま現代の着用者への恩恵になっていることに気づきます。
まず生地は、13.25オンスのデニムを使っています。
一般的なジーンズが12オンス前後であることを考えると、一段重い、ワークウェアらしい仕様です。
当時のワークウェアは、毎日ハードに使われることを前提に作られていました。牛舎で、農地で、雨風にさらされる環境で。その堅牢性を出すための重さが、13.25オンスという数字に残っています。
現代においてこれが何を意味するかというと、まず「しっかりした着心地」があります。着たときにどっしりと体に乗る感覚があり、薄手のデニムとは明確に違う存在感があります。
そしてもうひとつ、経年変化の深さです。
厚みのある生地は、穿き込みによるアタリや色落ちが、より立体的に出ます。自分の動き方、自分のクセが、長い時間をかけてじわじわと布に刻まれていく。
それが13.25オンスという選択の、現代における意味です。
ステッチには三本針ミシンを使い、糸色はホワイト。
これも当時のワークウェアの定番仕様に沿ったものです。 ホワイトステッチは目立つ分、縫い目のラインが服の「骨格」として見えてきます。
きれいすぎず、でも主張がある。その塩梅が、デニムの無骨さと合っています。
バックスタイルはサスペンダー仕様+釦止めのローバック。
これも当時の仕様をそのまま残したディテールです。ここの仕様はオリジナリティを出しやすい部分ですが、余計なものを足さない。それが結果的に、着る人の個性を邪魔しない設計になっています。
当時は労働者のユニフォームとして実用性を優先していたからこその、シンプルなつくりと言えるでしょう。
そして出荷時はノンウォッシュ、つまり糊を落としていない状態です。
初めて身に着けたとき、生地はまだ硬く、かっちりしています。そこから洗いと着用を重ねるごとに、生地が体に馴染み、色が落ち、風合いが変わっていきます。
「未完成品を届けている」のではなく、「育てる余白を届けている」という、STAR OVERALLの大きなこだわりの1つです。
100年、縫い続けてきた会社だから
なぜここまで100年前の忠実にこだわったのか。
そこには山本被服という会社の性格が関係していると、僕は思っています。
山本被服はユニフォームメーカーです。作業着や制服を、誠実に、丁寧に作り続けることで100年近く事業を続けてきた会社です。華やかさやオシャレさよりも、「即現場で使える実用的な服を届ける」という仕事を積み重ねてきました。
そんな会社が原点を復刻する際に、「インスパイアを得て今風に作る」という選択は、最初からなかったと思います。 ユニフォームの仕事と同じように、仕様と向き合い、職人と話し合い、何度も試作して、1枚ずつ手作業で縫い上げる。 初回の100着にはシリアルナンバーが刺繍されています。それは「一着一着に意味がある」という作り手の意思表示です。
工場メンバーにとって、本質は普段の仕事と変わりません。
STAR OVERALLのコンセプト「人生にユニフォームを」に従い、着る方1人1人が長い時間をかけて人生の相棒を育てていけるように、自社工場で丁寧にデニムのユニフォームを縫っています。
復刻の裏側にいた作り手たちの話、少しでも伝わったでしょうか。
13.25オンスの生地も、三本針のステッチも、ノンウォッシュの仕上げも、すべては「当時のまま」にこだわった仕様です。それが着る人とっては、「育てる楽しみ」として手渡されます。
次回は、「ユニフォームメーカーである山本被服が、デニムアイテム作りにどうこだわっているのか?」についてお話しする予定です。
引き続きお付き合いいただけたら嬉しいです。
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