BLOG

2026/07/31 10:27

こんにちは!
日本最古のデニムブランド「STAR OVERALL」の広報担当Mです。


前回、STAR OVERALLの復刻がどれほど忠実だったかをお話ししました。
オンス数も、ステッチの表情も、当時の一着から一つずつ拾い直したという話です。


前回のお話はこちら
↓ ↓ ↓ ↓ ↓

【STAR OVERALLのこだわり】2/5:100年前の設計を、現代でどう再現したのか


なぜ、山本被服にはあそこまで忠実な再現ができたのか。
デザインを再現する技術がある会社は、他にもあるはずです。
答えは、技術ではありませんでした。
この会社が100年かけて積み上げてきた、服づくりの思想。
今日はその話をしようと思います。


選べない服は、裏切れない

山本被服は1926年、沼津で創業しました。
戦時中には海軍指定工場、陸軍監督工場として布を裁ち、縫っていた会社です。けれど戦争で工場が焼け、デニムを作るための機械や資料はほとんど残りませんでした。
それから長い間、この会社が手がけてきたのは、法人や官公庁向けの制服や、現場の作業着でした。

僕はこの会社に関わるまで、制服というものについて、深く考えたことがありませんでした。
でも工場に通ううちに、ひとつ気づいたことがあります。
制服には、着る人が選ぶという工程がありません。支給されて、着る。それだけです。
営業に出る日も、倉庫で荷を運ぶ日も、雨の日も、同じ一着です。気に入らないから着替える、ということができません。
だから、かっこよさより先に、擦り切れないこと、洗っても型崩れしないこと、誰が着ても差が出ないことが問われます。
選ばれる服なら、多少の癖があっても個性で片付けられます。
でも選べない服には、その逃げ道がありません。
見せるための服ではなく、一日を支えるための服。

長い間そうやって服を作り続けてきたこの会社に、あるとき一冊の雑誌から問い合わせが届きました。
日本最古のデニムブランドの生みの親だったという自分たちの出自に、社内の誰もが驚いたと聞いています。それがSTAR OVERALL復刻の始まりです。
ファッションの会社が新しくデニムに挑戦したのではなく、ユニフォームを作り続けてきた会社が、そのままの姿勢で自分たちの原点に向き合った。
前回お話しした忠実な再現という選択も、根っこはここにあります。
自分では選べないユニフォームが、それでも現場できちんと役に立つように。そのことを、この会社は自社工場の中で、長いあいだ確かめ続けてきました。
作って、現場に送り出して、また直す。それを何十年も繰り返せる場所を、自分たちの手の中に持っている会社です。
だから今回、あの一着をもう一度作りたいとなったとき、どこかに頼るのではなく、自分たちの工場で、素早く、忠実に再現することができたのだと思います。


その視点が、縫い目の指示になる

前回の記事で、開発責任者の富所さんが職人に、きれいに縫わないでほしいと頼んだ話をしました。当時の三本針特有の、少し暴れたような針目を、あえてそのまま残すという判断です。
効率だけを考えるなら、まっすぐ縫ったほうが早いはずです。検品も楽になります。
それでも富所さんは、当時の一着にあった、少し野性味のある縫い目を残す方向に舵を切りました。
簡単な話ではなかったはずです。
何十年も揃えることを叩き込まれてきた職人の手は、長年染みついた手つきで、どうしてもきれいに縫ってしまう。粗くしてほしいと伝えても、自分たちにはそれだけの技術があるのだから、という気持ちがどうしても顔を出す。
富所さんはそれを、職人としての誇りなのだと語っています。

考えてみれば、この葛藤は、ユニフォームメーカーの100年がなければ生まれなかったものです。
揃った品質をひたすら追い続けてきた手だからこそ、あえて揃えないことが挑戦になる。荒々しさをあえて残すという選択も、突き詰めればここに行き着きます。

これは飾る服ではなく、使われる服だ

ユニフォームを作り続けてきた会社だからこそ持てる前提です。


品質を、人ではなく仕組みに預ける

もうひとつ、工場に出入りするうちに気づいたことがあります。
同じものを、同じ品質で、何百着、何千着と作り続けることの難しさです。
一点物なら、多少の揺らぎは個性として片付けられます。でもユニフォームは、支給された人によって当たりはずれがあってはいけません。
どのラインで縫われても、誰の手を通っても、同じ強度、同じ機能を持っている必要があります。これは、腕のいい職人が一人いれば解決する話ではありません。仕組み全体で、基準を揃え続けるという話です。

STAR OVERALLの一着一着にも、職人の手作業が入っています。
手作業だからこそ出る表情もありますが、その裏には常に、これは基準を満たしているかという、ユニフォームメーカーとしての目があります。
縫い目の間隔から糸の張り具合まで、数字で測れる部分と、手で確かめないとわからない部分の両方を、同じ丁寧さで見ていく。派手さのない話です。
でも僕は、この均一であろうとする姿勢こそが、誠実さの正体なんじゃないかと思っています。


支給される人から、選ぶ人へ

ユニフォームには、もうひとつ大事な性質があります。
着る人の仕事に、長く寄り添い続けるということです。毎日同じ一着で立ち、動き、汗をかく。何年もそれを繰り返すうちに、服のほうが、着る人の仕事を覚えていく。
制服とは本来、そういう距離感の服です。

STAR OVERALLが掲げる「人生にユニフォームを」というコンセプトは、この感覚を一般の暮らしに引き移したものです。
仕事のための制服ではなく、自分で選んだ一着が、日常に寄り添い続ける。休日も、遠出も、何気ない一日も、同じ一着で過ごしていく。山本被服にとって、これはまったく新しい発想ではありません。長い間ユニフォームづくりで培ってきたことの、対象を置き換えただけです。
支給される人から、自分で選ぶ人へ。
ユニフォームを作り続けてきた会社が作るデニムに、流行を追うブランドとは違う軸があるとしたら、理由はここにあります。
ノンウォッシュのデニムは、最初は硬い生地です。それが、洗うたび、着るたびに、体の動きに合わせて馴染んでいきます。
新品のときに完成している服ではなく、着るたびに自分に近づいていく服。
「人生にユニフォームを」という言葉の意味は、一着と過ごす時間の中でこそ実感できるものだと思っています。一着を選ぶという行為は、案外重たいものです。
でも、100年「使われる服」だけを作ってきた会社が本気で仕立てた一着なら、その重さに応えてくれるはずです。



もともと、誰かの仕事を支えるために作られてきたユニフォーム。
その思想のまま仕立てたデニムが、いま、まったく違う場所で着られ始めています。
仕事のための頑丈さが、休日の相棒としての頼もしさに変わっていく。

バイクにまたがる休日

キャンプ場の焚き火の前

仕事のための服だったはずのものが、なぜ大人の遊び着になっていくのか。
次回は、その転回についてお話ししようと思います。


STAR OVERALLのデニムを見る

山本被服が100年培ってきたユニフォームづくりの思想を受け継ぎ、一着ずつ丁寧に仕立てているデニムです。
気になった方は、一度BASEのページをのぞいてみてください。

日本最古のデニムブランド STAR OVERALL公式通販